十年 <アンコール上映>

2015年/香港/108分

監督
『エキストラ』:クォック・ジョン
『冬のセミ』:ウォン・フェイパン
『方言』:ジェヴォンズ・アウ
『焼身自殺者』:キウィ・チョウ
『地元産の卵』:ン・ガーリョン

公式サイトhttp://www.tenyears-movie.com/

変わりゆく現実と、変わらないと願う未来 本作は制作された2015年から10年後の香港を描いた5つの物語からなるオムニバス作品。 香港政治の舞台裏をアイロニーたっぷりに描いた第1話『エキストラ』。失われゆく記憶の記録に思いをはせる第2話『冬のセミ』。母語である広東語だけでは生きづらくなった香港を活写した第3話『方言』。雨傘運動(※1)後の喪失と再生をドキュメンタリータッチで表現した第4話『焼身自殺者』。地元への愛と本当の真実を求める思いが交錯する第5話『地元産の卵』。 ※2014年9月に始まった、香港政府への抗議活動。鎮圧部隊が発射した催涙弾を、抗議者たちが雨傘を使って避けたため、こう呼ばれるようになった。

第1話『エキストラ』
監督:クォック・ジョン(郭臻)
真愛連ラム党首と、金民党ヨン党首がゲストで登場する労働節(メーデー)の集会の準備が進んでいる。一方同じ団地のとある部屋にいる2人。胸に「愛」という文字のあるポロシャツを着て、長毛(チョンモウ)は、頭にラム党首の写真付きのかぶりものを付けている。インド系の顔立ちのピーターは、銃を手に実行犯役の練習をしている。生活のために少しでも高額の仕事をしたい2人は、集会で騒ぎを起こすよう兄貴から命じられ、どう演じるか思案中だった。会場では労働節の集会が始まろうとしていた…。
第2話『冬のセミ』
監督:ウォン・フェイパン(黄飛鵬)
2人の男女が、身の回りの物を黙々と標本にしている。壊れた家のレンガや、街で集めた日用品などである。彼らは、記憶と特定の物に囚われていた。2025年の香港は、黙示録の中に書かれた世界のような季節を迎えている。現在存在する生物は870万種。それはかつて、地球上に存在した生物の2%にしか過ぎない。ある朝男が、自分を標本にしてほしいと頼んだ。自分のやってきた事を徹底し、信念を曲げないために。少しずつ準備は進められていった…。
第3話『方言』
監督:ジェヴォンズ・アウ(歐文傑)
普通話の普及政策で、タクシー運転手に試験が課せられることになった。広東語が日常だった彼にとっては、普通話を学ぶことは大変で、大きな支障となる。仕事が出来る場所が制限され、自由に乗客を乗せることが不可能だし、乗せてはいけない場所で、半ば無理矢理に客が乗り込んできても、違反だと警察に言われる。もうすぐ中学生になる子供は、学校では普通話で学ぶ。外国のサッカー選手の当て字が広東語と普通話と違うため、音が違い、誰の話なのか、親子のコミュニケーションにも時間がかかる状態だ。
第4話『焼身自殺者』
監督:キウィ・チョウ(周冠威)
2025年ある日の早朝、イギリス領事館前で焼身自殺をした人物がいた。目撃者がおらず、遺書もない。テレビのニュースは身元も動機もまだ発表されていないし、独立運動と関連があるとの見方もあると報じていた。恋人のカレンが以前、私が自殺したらどうする?と聞いたのを思い出し、胸騒ぎを感じた彼は大学へと向かう。カレンの仲間たちは、逮捕されたカレンを助けに行くと言うが、彼は行かないと言い、まるで腰抜けの様な扱いを受ける。しかし自殺者の追悼集会には、静かに蝋燭に祈りを捧げる、彼の姿があった。
第5話『地元産の卵』
監督:ン・ガーリョン(伍嘉良)
2025年香港で最後の養鶏場が閉鎖される。父親の時代からずっと仕入れていた養鶏場で、息子のチョンはその知識と技術を買われ、台湾に行くことを決めた。店先に書かれた「地元産の卵」という表示の、「地元産」という言葉が良くないと、少年団が写真を撮っていった。同じ制服を来て帰ってきた息子に、規則に反していると言われた事を問い詰める。持っていた通知には、少年団の団長は団員に諜報活動をさせる権限をもち、親に通知しない場合があると書かれていた。また、良くない言葉のリストが配布され、その中に「地元産」という言葉が含まれていたのだ。
トークショー
2/8(土)『十年』15:40の回「上映前」
【登壇者】
Kaoru Ngさん(香港人/フォトグラファー)
今井一さん(ジャーナリスト)

●Kaoru Ng プロフィール
香港人。イギリスで学んだ後フォトグラファーに。100回以上にわたり日本を訪問し日本文化を熟知しています。2019年6月以降、日本の通信社、放送局などメディアの取材活動に協力。通訳、コーディネートを担う。警察が襲撃して戦場と化した香港理工大での争乱現場にもいました。

●今井一 プロフィール
ジャーナリスト、長年、国内外で「市民が本当の主権者になる」現場を取材。昨年6月以降、4度にわたって香港での現地取材を重ねる。著書は『「憲法9条」国民投票』『「原発」国民投票』『国民投票の総て』『住民投票—観客民主主義を超えて』『住民投票の総て』(5月刊行予定)など多数。
上映スケジュール
2/8(土) ★上映前トークあり
・15:40~トーク開始
・16:30~映画開始
2/9(日)18:05
2/10(月)~14(金)16:50
料金
一般1,500円
シニア1,100円
専門・大学生1,200円
中学生・高校生1,000円
小学生以下700円
会員1,000円