康浩郎のシネマ黙示録#1
「大大阪から大阪へ」

上映作品 3作品同時上映
シネマ1:ドキュメント人間『大都会の海女』(1965年/日本/25分)
シネマ2:『オープン・スペースを求めて』(1969年/日本/18分)
シネマ3:『阿呆船〜さかしまの巡礼』(1984年/日本/43分)

監督康 浩郎

内国勧業博から千里万博、そして舞洲万博へ…ユートピアの先に大阪の未来は見えるか?! 映画は「イメージとしてのイメージ」、 それは、かつてなかったものの思い出… 動物は失っていて人だけが持つ能力。 (ジョルジオ・アガンベン) 大大阪から大阪へ… 大阪が辿り着いた終焉から、再生のユートピアへ救い出す。3作、一挙上映。 今から50年前、大阪千里丘陵に創造された太陽の塔。岡本太郎はそこに3つの顔をあしらった。天辺の「黄金の顔」は未来を、腹部の「太陽の顔」は現在を、そして背面の「黒い太陽」は過去を表現。死から再生への出発点…という神話が秘められていたのです。


康 浩郎 KOH Hiroh

(映画監督/シネマ・アクティビスト)
1938年大阪生まれ。日大芸術学部(映画学科)在学中に『釘と靴下の対話』の集団製作に参加。卒業後、松本俊夫監督『西陣』の助監督を皮切りに、各種アヴァンギャルド映画やTVドキュメンタリーの監督を務める。代表作は『むちうたれる者』(1969)、『阿呆船〜さかしまの巡礼』(1984)など。
1980年代末よりテレビ局の報道番組・経済特番などを多く手がけ、2004年には大阪市とともに新人監督育成のための映画祭「CO2・フィルム・エキシビション」を立ち上げ、総合プロデューサーに就任。いっぽう、番組製作は衛星放送に軸足を移し、東日本大震災をテーマにした『共感の絆』3部作(2012〜13)や、長崎浦上の潜伏キリシタンを描いた『沈黙の声』(2017)などを発表。


上映作品

【シネマ1】
ドキュメント人間「大都会の海女」 (1965年/25分26秒)
【時代背景】
済州島チャムス(海女)の国外出稼ぎは百年を越える歴史を有する。彼女たちが移動してきた背景には、日本の植民地支配があった。併合前から荒らされた済州島の海を離れ、遠く朝鮮半島から中国、ロシア、そして日本へ出稼ぎ出漁を繰り返してきた。…(中略)…解放後の帰郷にあたっては、持ち帰り財産の制限や交通手段確保の問題、済州島での経済状況などさまざまな要因で日本に留まる人々がいたのである。そのなかで継続して日本の海で潜水漁をするチャムス、さらに解放後の済州島での「4・3事件」により日本にいる人びとを頼って渡日し、その後の生活のために裸潜水してきたチャムスもいるのである。
伊地知紀子(大阪市立大学文学科教授)「帝国日本と済州島チャムスの出稼ぎ」
【初演時の評】
戦後日本人は、何を記憶し何を忘れ去ろうとしていたのか。日本人にとって「近代」とは何であり、「他者」とは誰であったのか。…(中略)…この作品がNHK番組と異なる点は、第一に「語り手の立ち位置」である。『大都会の海女』では、彼女たち(眼の前にいる海女たち)が主語で語られていた。最後に満員の通勤電車に揺られる海女たちにナレーションが被さる。
「生きているところが彼女たちの朝鮮である。そして、朝鮮ではない」。
丁 知恵(東京大学院)
【シネマ2】
オープン・スペースを求めて (1969年/18分55秒)
【時代背景】
三菱地所設計、大林組企画、岩波映画製作、大阪自主映画センターの集団制作の渦中に居ながら演出を担当。万博前夜に、カルチェラタンとゴダールを意識しつつ時代を走り抜けた!
現代音楽の小杉武久が作曲を担当し、のちに彼の作曲で評価も高まり80年代以後の時代に前衛精神を引き継ぐよすがとなった記念すべき作品!
大阪建築士協会誌「まちなみ」2003/3号より
【初演時の評】
クライアントからのオーダーは、高層ビルが生み出す「オープンスペース」というテーマ一点だけだった、と康氏は語った。…(中略)…。果たして本当に高層ビルの建設や大規模な開発が、都市を真にヒューマンにするのか。音響的に処理(イメージのイメージ)化された「オープン」「スペース」「ヒューマン」の声がリフレインする中、ありのままの都市の姿を映すことで、康氏は、映像の力でもってその疑問を語らせようとした。
高岡伸一(大阪市立大学都市研究プラザ講師)
【シネマ3】
阿呆船〜さかしまの巡礼 (1984年/43分53秒)
【時代背景】
東京からやってきた人々が観てブッ飛ぶほどに驚くという関西の眠れる獅子、闇の無冠の帝王・松本雄吉率いる劇団「日本維新派」’83年12月公演「月光のシャドーボール」のセミドキュメンタリフィルムが新人映像作家康浩郎監督によって完成された。彼らの公演は、毎回厳寒、暴風、大雨に彩られ、とてつもなくドラマチックな大阪の大事件。
彼らのドキュメンタリフィルムは、今をときめくあの井筒和幸監督によって’78年に「足の裏から冥王まで」で映画化されているが、今回は、前回にまして幻想美、彼らの魅力を十二分に映像化することに成功している。
(1980年4月発行『映画新聞』より)
【初演時の評】
作品では維新派のパワーを見事に吸収、破壊、構築しています。特に維新派を切り裂いた破壊力はすさまじく、「月光のシャドーボール」から「阿呆船」への大きな原動力となり、康さんの資質…冒険主義的破壊性は15年間、持続していたようです。その破壊力に相乗してたのが福島洋氏の研ぎ澄まされたカメラによって映画ならではのさかしまな世界も覗けました。
眩く虚飾な都心=現世と、コンテナヤード内の「阿呆船」=彼岸との対峙構造です。復活した監督の活躍を期待します。
谷 潔(映像作家)
上映スケジュール
未定
料金
未定