追悼・井上陽一さん
『特急三百哩』活弁ライブ

追悼・井上陽一さん


2017年4月29日　シアターセブンでの初回公演にて
写真撮影：鵜久森典妙

2017年から当館にて、定期的に公演を行って頂いた井上陽一さんが、
去る2021年2月9日にお亡くなりになりました。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。

1979年に弁士デビューをされた井上さん。
40年以上活動を続け、生涯の公演回数は約600回。
生涯現役で弁士を続けておられました。


当館では、2017年から2019年という短い期間のご出演でしたが、たくさんの想い出があります。
迫力のある七五調の語りで映画に息を吹き込み、会場に興奮と感動を届けてくださいました。
自らカセットテープで音楽を鳴らしながら語るという、井上さん独自のスタイルも印象的でした。
いつも冒頭で「女性の声が出づらい」とおっしゃっていましたが、艶のある美声でした。楽屋での昔話も、楽しかったです。
そして、入場料金がなるべく高くならないように設定していたのは
『いつまでやれるかわからないので、一人でも多くの人に見ていただきたい』という井上さんの想いからでした。

井上さんの名調子が、もう生で聞くことができないのは本当に寂しく、心に穴が開いたようです。


昨年2020年はコロナによって、当館で予定していた公演を二回も延期せざるを得なくなりました。
そのことを、とても井上さんは気にしていらっしゃいました。
昨年11月に行われた宝塚での（最期になってしまった）公演の際、ご挨拶に伺ったら、私の顔を見るや否や
「『特急三百哩』二回も延期になって、ごめんなァ！また懲りんとやらしてな！」と
いつものハリのある声でおっしゃっていました。

今回は井上さんの追悼ということで、弁士・大森くみこさんとピアノ・鳥飼りょうさんで『特急三百哩』をご披露いただきます。
お二人のスタイルで、井上さんが遣り残した『特急三百哩』を走らせてくださることと思います。


井上さん、今頃は阪神タイガースの試合を見ながら、お酒を飲んでいるでしょうか。
またそちらでも、多くの方を素晴らしい話芸で楽しませてくださいね。

本当にお世話になり、ありがとうございました。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。


シアターセブン　イベントプロデューサー
福住 恵